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低位舌とは?

2020年11月1日 【ブログ
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舌には、食べ物をかんで食べる(そしゃく)、のみ込む(嚥下)、味を感じる(味覚)、発音する(構音)際に必要な機能が備わっています。

 

食べ物を口に入れると、舌はまず、食べ物の温度や硬さを感じ取ります。

そして、かむ際、舌は上下の歯の間に食べ物を置くように動き、かむ瞬間には食べ物が落ちないように支えます。

細かくなった食べ物は口の中にばらけるので、これを唾液と混ぜ合わせながらまとめ、また歯の上にのせてかめるようにします。

細かくまとまると、今度はこれを舌が咽頭の方に送り込むことで、のみ込める(嚥下できる)ようになるのです。

 

味覚は舌や上顎などに存在する味蕾(みらい)という組織が感じますが、大部分は舌にあります。

すなわち、舌こそが味を感じる主要な部分です。

また、私たちが発声するとき、発した言葉は舌が口の中で動くことによって音になります。

例えば、か行では舌の奥、た行では舌の前方、ら行では舌の先端が上顎と当たることで発音できるのです。

 

本来、何もしていないとき(安静時)には、舌はリラックスした状態で一定の場所に位置します。

舌の先端は上の真ん中の前歯2本の間の裏側から1、2ミリ内側の歯茎に触れている状態で、舌全体も上顎に触れた状態が正しい位置となります。

このとき、上下の歯は数ミリ離れているか、わずかに触れている状態が正常とされており、強くかんでいるのは異常です。

 

低位舌とは、舌が本来の正しい位置よりも低い場所に置かれる状態をいいます。

舌が上顎に触れず、上顎との間に空間ができ、下顎のくぼみにおさまっていることが多いです。

 

人間は授乳期、舌と上顎を使って母乳を飲みながら、正しい飲み込み方を覚えていきます。

しかし、哺乳瓶など乳児が楽に飲める環境だと、こうした舌の動きが不要となり、正しい嚥下機能が得られず、低位舌の原因になると考えられています。

わざと吸いにくくして、嚥下機能を妨げないようにデザインされている哺乳瓶もあるほどです。

他の原因では、幼児期の長期にわたる指しゃぶりが挙げられます。

指しゃぶりによって前歯が正しい場所に生えず、上下の前歯がかみ合わないために隙間ができると、嚥下時に舌を入れ込む癖がつき、舌の筋力が低下する場合があります。

また、『舌小帯(ぜつしょうたい)』と呼ばれる舌の裏側の筋が短いと、のみ込む際に舌を持ち上げられず、前歯の隙間に舌を入れ込んでしまう癖がつきやすいです。

そのほか、口周りや頬の筋力が弱いと、舌による外側への力に負けて歯並びが崩れ、前歯に隙間ができてしまうことがあります。

また、鼻の病気などで鼻呼吸がしづらいと、口呼吸になりやすく、空気が通る道筋を確保するために自然と舌が低い位置に置かれるようになります。

これが癖づくことで、慢性的な低位舌となるのです

低位舌と関連性の深い口呼吸は恒常的に口が開いているので、食事時のクチャクチャ音が外に漏れやすくなることがあります。口呼吸は歯周病や口内の乾燥、口臭の原因になる上、寝ている間のいびきや睡眠時無呼吸症候群を引き起こしやすくなります。

低位舌で舌の筋力が低下すると、食事時のそしゃくや嚥下などの機能が落ちるため、誤嚥につながります。

舌の筋力が落ちると滑舌も悪くなりますし、顎の下のたるみの原因にもなります。

また、本来なら、安静時には触れ合わない上下の奥歯がかみ合わさりやすい状態となり、くいしばりや歯ぎしりなどが起こりやすくなります。

低位舌は自分でチェックできます。

◯舌の縁が歯型でボコボコしている

◯口が乾きやすい

◯滑舌が悪くなった

◯歯ぎしりや食いしばりがある

◯鼻呼吸がしづらく、口呼吸をしている

◯いびきをかきやすい

◯家族に睡眠時の無呼吸を指摘された

◯顎の下がたるんでいる――

など一つでも自覚があるなら低位舌の可能性があります。

しかし、別の原因でこれらの症状が起きている場合もあるので、確定診断には歯科医院の受診が必要です。

低位舌は舌の位置に問題があるというだけで、それがすぐに病気という判断にはなりませんが、セルフチェックをきっかけに病院を受診するなど、放置すると病気になる『未病』の段階で健康改善につなげることが大事です。